心のお薬になる本(34)『勉強しなければだいじょうぶ』五味太郎/著
この(34)「直観ひとりごと」のブログは、カウンセリング歴30余年の大阪の「5時間で1回きり」の「潜在意識の本質と使命とトラウマ」を探る心理カウンセラー&本質セラピスト三宅麗子の投稿頁です。
★直観ひとりごと(34)
◆『勉強しなければだいじょうぶ』五味太郎/著
今回の本は、教育の根本的なコトを真摯に考えているのは、教育を生活の糧にするの教育者なんかではなく、絵本作家だったという一冊です。
著者五味太郎氏は、絵本作家でエッセイも書き、子供向けの作詞家としても活躍されています。子どもに対する考え方は、生活を糧にする教育者でないだけに、真の教育者としても一流でしょう。
五味太郎氏の絵本は、日本の母親ならば、一度は、子どもに買って与えたコトがあるのではないでしょうか? 或いは、子ども自身が、自分からすすんで読みたいと手に取った絵本ではないでしょうか? 幼児期の昔話やおとぎ話の絵本から卒業して、次に読ませたい絵本が五味氏の絵本だと思います。
五味氏の絵本は、押しつけの教育関連の本とは一線を画する絵本とも言えるでしょう。だから、彼の本は、絵本という概念から飛び出して、躾けとはまた違う、人間としてのあるべき姿や、成るべき人間になる「人育(?)や「徳育」の教科書としても、世のママたちに持てはやされています。それほど、教育家としても、一流です。
そんな五味氏が、絵本ではなく、この本では、教育の歪さをシャープな感性で切り込みます。「学校論」と言うよりも、勉強するというコトに疑問を呈します。「勉強」と「学習」の違いとして、学校のあり方を問題にしています。
誰もが、「勉強する」というコトに疑問をもたなかったコトから、彼は疑問を呈するとは、なんと直感人間なのでしょうか。そして、この本のタイトルの意味から彼の言わんとする思いが、浮き彫りにされてきます。「勉強はしなくてもいい」というのではなく、「勉強はしないほうがいい」という意味は、勉強すればダメになるという裏返し…。勉強することによって、何かが失われていく、壊されていく…。
しかし、五味氏は、勉強はしないほうがいいとは言っていますが、学習はするべきとも言っておられます。ここに彼の深い意味が込められています。
「勉強」とは「勉め強いる」コト。
「学習」とは「学んで習う」コト。
この言葉の違いに、こうして指摘されれば、誰もが気が付くのですが、言わなければ、気がつかないのですね。そこが彼の凄さでしょうか?
彼は、学校が「正」や「善」と当り前のように潜在意識に組み込まれてしまった為に、その学校になじめない子どもたちは、すべて、欠陥人間とみなす現代の教育の在り方に鋭いメスを入れています。
私も彼の意見に同感です。今の子どもたちは、親や教師の手に負えない子どもにならないように、家庭でも教室でもかしこく、おとなしく、規格どおりに育てられているようなイメージがします…。乱暴者も暴れ者もダメ。みんなと一緒が「善」…。要するに、野菜と同じ。キュウリならまっすぐが良し、曲がったものは商品にならないので廃棄される、人間もそういう感覚がまかり通る。
教室でかしこまって、無理やり、綺麗に並べられた椅子に座らされて、勉強させられている光景は、なんか鶏が一列に並んで卵を機械的に産まされたり、鶏肉としてブロイラーされる為に一列に飼育されているような気がしてなりません。
その結果、社会に出てからも、殆どの若者が二流三流の企業に就職するために、自分の意志ではなく、とにかく、黒いスーツに身を包み、就職先を次から次に面接して、そして、やっと、働きたくもない会社に就職できたことに安堵して、働くことの意味もその疑問も不満も感じずに、誰かの引いた線路を、何も考えずに歩いていくような、そんな風景と重なって見えてしまいます。まるで、他の選択肢は、不幸に繋がる道でもあるように…。
でも、それはそれでいいのかもしれません。実際に、人生を歩み出してから、大きな壁にぶつかったトキに、真剣に悩むというか、考えるコトで、人間って、成長するのでしょうね。就職できないよりも、就職できるほうが、心の衛生上は「良し」なのですから…。そして、それから、悩んで始めて、自分の生きる道を探し出す、新たな真の人生の旅立ちが始まるのでしょう。やり直しは何度でもききます。やり直そうと思ったトキが、また新たな門出です。
そういう遠回りをしたくないなあという人や、遠回りをしたけれどもう一度やり直したいなあと思う人にとっても、この本は、勉強するという意や、学習するという意味を考えさせてくれるでしょう。もう一度、本当の学習をするトキかもしれません。学習するのに、学校に通う必要はなく、今、その生きている場、「人生の場」が生きる「寺子屋」であり、「道場」なのでしょう。
●『勉強しなければだいじょうぶ』五味太郎著
内容紹介
世界的な絵本作家である五味太郎。『きんじょがにげた』や『みんなうんち』など彼の絵本は、多くの子どもたちの心をとらえ、読みつがれている。そんな彼が、どうすれば子どもが本来持っている豊かな才能を伸ばすことができるかを楽しいイラストとともに綴った教育論。ベストセラー『大人問題』から14年。子育てに悩む親たちへの久しぶりのメッセージ。アマゾンより。