心のお薬になる本(38)『家庭教育の心得21』森信三/著
この(38)「心のお薬になる本」のブログは、カウンセリング歴30余年の大阪の「5時間で1回きり」の「潜在意識の本質と使命とトラウマ」を探る心理カウンセラー&本質セラピスト三宅麗子の投稿頁です。
★心のお薬になる本(38)
◆『家庭教育の心得21―母親のための人間学』森信三/著
著者森信三氏は、日本の哲学者・教育者であり、「全一学」という学問を提唱・実践して、「しつけの三原則」等で、主体的人間になるための「立腰教育」などをひろめられて、現在も教育界に多大な影響を与えておられる方です。
私は、昔の日本人が素晴らしかったのは、修身(身を修める)を、きっちり教育に取り入れていたからだと思っています。
日本が戦争に負けて以来、それまでの教育は、全部ダメだとばかりに、道徳や倫理や修身を義務教育から排除した結果、魂の徘徊が始まったように感じます。
グローバル社会に通用するためにと、英語教育に力をいれる方針が高じて、日本語を教える国語が疎かになってしまっているような感が否めません。
また、学力至上主義と言わんばかりに、文化系よりも理科系が重んじられ、昨今では、女性が理科系で活躍するニュースに浮足立って、益々、文化系が疎かになっていく方向にあります。
しかし、人間が「人間」としての基礎や根本をしっかり確立するためには、まず文化系、特に、国語力が重要です。
なぜならば、人と人とがコミュニケーションを上手くとりつつ、自分の意思を伝達して、世の中で、何かコトを成すためには、日本語を上手く操らなければなりません。それができて始めて、理科系の勉強も上手くいくと言うものだからです。
何をするにもまずは、自分の国の言葉を尊敬して、学ぶ姿勢が大切です。そして、その尊敬して学ぶ姿勢をつくるために、「修身」というモノがとても重要となるのです。
しかし、この「修身」といっても、いわゆる昔ながらの伝統的な作法や躾け等ではありません。例えば、小笠原礼法のような現代では形骸化してしまった、礼儀作法の類等では決してありません。
着物や襖や畳が実用的でなくなりつつある日本人の生活の中で、昔ながらの作法や躾けでは今の現代人には受け入れられません。形式や型などではなく、日本人の魂の奥にずっと守り続けていた、人間としてのあるべき姿を、意識して、身に修める方法が今、一番必要なコトなのです。
それを、私はこの本『家庭教育の心得21―母親のための人間学』に求めたいと思っています。
この本の著者森信三自身の生き様が「修身」以外の何ものでもない。まさに、彼自身の人生が、修身を極めた人生だったのでしょう。
巷には、偉い作家や著者がおられますが、得てして、書くコトは大層立派でも、本人は、あにはからんや、行動はそれとは程遠い方もおられまして、まさに「言うはやすし行うは難し」という感が否めません。
でも、森信三氏は、誰でもが見習う、身を修めるべき、「模範の人」なのではないでしょうか。彼こそが、真の哲学者であり教育者でありましょう。彼の人生そのものが、物言わぬ「修身の教科書」なのです。
森氏が提唱された「わが子における三つのしつけ」と「腰骨を立てる教育」は、わが子の躾けにとっては、これ以外にはいらないと思うほどの日本人、いえ「人間」にとってのルールであり定石であると信じます。
三つの躾けとは、
①朝親に挨拶する
②親に呼ばれたら「ハイ」と返事する
③履物は脱いだら揃える、席を立ったら椅子を入れる。
たったこれだけです。これが人間が人間らしく生きる根本的な躾けの三つだそうです。難しいコトはいらないのです。宇宙はシンプルなので、これは本当に理にかなっているとしか言いようがないのです。
シンプルに教える「教育者」って、本当の「本物」でしょう。
略歴ですが、森氏には、若い時に両親が離婚して、3才の時に、森家に養子に出された時から、苦労の人生ですが、それにもめげず、勉学に励み、生涯の師となる「東洋哲学」の西晋一郎や日本を代表する哲学者西田幾太郎に巡り会い、その後、教育者の道を歩むようになったようです。
50才の敗戦からが彼の彼たる所以で、幾多の辛酸を経てから、65才まで大学教授を務めあげられたのです。普通の人間ならばそれで悠々自適になるはずだけれど、森氏はそれからが自分の人生の集大成に入ったのです。
70才にして念願の『全集』25巻の出版に着手して、また大学院の教授にも迎えられたのです。そして、77才の時長男を亡くしたことを機に、独居自炊の生活に入られ、8才の時『全一学』5部作の執筆に没頭されます。
86才の時、彼の身に不幸が襲い脳血栓で入院を余儀なくされるも、89才の時には『続全集』8巻を完結させ、そして、97才の平成4年に亡くなられました。
なんと凄い人生なのでしょう。今の日本人の多くは、定年が来れば、もう人間としての人生が終わったかのような、おまけの人生を仕方なく、生きているかのような人が多い中、こんな素晴らしく、「有り難き人生」を送った日本人が、遠い昔にではなく、現在の平成まで、生きておられたことに、日本人として本当に有り難く感謝するしかございません。
「有り難き人生」とは、この世に有り得べからざるような人生というコトなので、こういう彼の人生こそまさに、彼にしかできない「有り難き人生」というのでしょうね…。いえ、彼に出来たということは、同じ人間である私たちにもできる可能性があるはずです。
こういう素晴らしい日本人のお蔭で、私たち日本人が、誇り高く生きられる証でもあるのでしょう。そして、私たちも、森氏や他の先人たちに見習って、死ぬ際の最後の最後まで、自分に正直に、身も心も引き締めて、生き切りたいと存じます。
この本は、きっと、子育てや育児でお悩みの若いママさんや人間関係でお悩みの方々にも、一縷の望みと成り得る本だと固く固く信じます。へたなカウンセリングや高価な医者の薬に頼るよりも価値のあるモノだと信じます。