心のお薬になる本(53)『セラピスト』最相葉月著
この(53)「心のお薬になる本」のブログは、カウンセリング歴30余年の大阪の「5時間で1回きり」の「潜在意識の本質と使命とトラウマ」を探る心理カウンセラー&本質セラピスト三宅麗子の投稿頁です。
★心のお薬になる本(53)
◆『セラピスト』最相葉月著
最近、ますます心を病む人が増えてきて、いとも簡単に、職を放棄したり、休職する傾向が強くなっております。
その傾向は「エリート層」と言われる人々に多いのは、一体なぜ?
昔のように、病気に対する疚しさや罪悪感がなくなったからでしょうか?
はたまた、健康で頑張る人のほうが「損」で、病気になるほうが「得」をする、という意識が蔓延しているからでしょうか?
まるで、病気になる人のほうが「正」というか、全うな神経の持ち主で、健康な人のほうが「負」というか、神経が鈍いという風潮に偏ってきているからでしょうか?
そんな懸念を感じる昨今ですが、私は、最近やっと、『セラピスト』という本を読み終えました。
前から興味があり、読んでみたかったのですが、遅々と進まず、やっと完読にこぎつけました(フ~!)。
読むほうも大変でしたが、きっと著者の最相葉月氏はもっと大変だったろうと想像いたしますと、本当に頭が下がります。
安易な本が多い中、こういう真摯に書かれた本が昨今では、本当に希少価値があります。
それだけでも、皆さん、読む価値はありますよ。
まして、世間は「一億総うつ病患者時代」の世の中なのですから…。
作者の最相葉月氏は、ご自分でも、ちょっと正常な人間ではないということを認識されていて、だからこそ、ここまでご自分をさらけ出された勇気には、感動すら覚えます。
こういう業界色や専門色の強い本は、ともすると立ち位置が上から目線で書かれるコトが多い中、この本はまるで、「クライアント」さんが書かれた本のような錯覚すら覚えます。
著者が決してエリート層や裕福な環境ではなく、また書かれている内容が誰でもが安易に書けない手法なのにも関らず、優等生の感じすらも読み手に与えない書き方は、本当に好感を覚えます。
この目線は、まるで、真のセラピストかカウンセラーのようであり、私のように、それを生業にしている者にとっては、心が洗われるようで、初心に帰る大切さを痛感致しました。
しかしながら、昨今のカウンセリング業界は、安易に「カウンセラー」や「セラピスト」に憧れる人が多く、その分、簡単に資格が取れたりもします。
またその反対に、「臨床心理士」などの資格を取るのは大変な割に、世間では冷遇される職業で、精神科医の添え物的存在でしかありません。
カウンセリングをするよりも手っ取り早く薬を処方するほうに重きを置く風潮のためか、そういう諸々の事情が絡み、かえって、理想のカウンセラーや臨床心理士に遭遇するのは、至難のワザともいえる感がいたします。
また、この業界では、クライアントの守秘義務と喧しく言われていますが、これはクライアントを守るのではなく、能力のないカウンセラーの職業や身分を守る役目を果たしているのでは? との強い懸念を持っておりますが、皆さんはいかがでしょうか?
命の次に大切なお金をいとも簡単に手に入れることが出来る割には、その成果が闇の中に埋もれており、それをだれも問題にしないのです。その結果、カウンセラーのはしごをするクライアントも大勢おられます。
この『セラピスト』を読んでいると、かつて私が心理学やカウンセリングを勉強した30年以上も前のコトが思い出され、まだあの当時は、カウンセラーを目指す人は、「クライエントを体験する」コトが重要視されていた良き時代でもありました。
本の中の著名なカウンセラーやセラピストに学んだトキが懐かしく思い出され、また自分の直観にそぐわない権力的な講師の顔なども浮かんできて、そういう経験をしてきたからこそ、今ではすべてが良い思い出となっております。
「己を知る」。ここから全てが始まるということを、真摯に学んでいたモノでしたが…。
しかし、そんな良き時代であっても、何かが「変」と感じたあの当時の私の直感は、今更ながらに「正解」だったということが、この『セラピスト』を読んで証明され、やっと合点がいったのです。
この本は、専門家であるカウンセラーやセラピスト以外でも、すでに治療を受けておられるクライアントや心の悩みで苦しんでおられる一般の方々にとっても、心強い参考書となるでしょう。
現代社会においては、全ての人は、何らかの病に冒されているといっても過言ではありませんが、それを「悪」として捉えることなく、また無理に「善」としても捉える必要もなく、そういう「病気」いう概念で捉える必要は全くないように感じます。
それでなくても、現代人は、次から次へと病気を発明発見することが得意で、それに命をかえる会社もあり、またそれに権威付けする風潮もあるので、ちょっと怖い気がしてなりません。
要するに、意識から「病気」という概念を消すことが一番大事なコトと存じます。
そして、ご自分が真に考える(神帰る)べきコトを、一生かかって、一生懸命「意識する」コトではないでしょうか。
この日本で悶々とされている全ての方々にとってお読み頂きたい書物です。
それぞれテーマや目的は違っていても、何らかの参考になると信じます。
この世に起こる現象には、すべて偶然ではありません。すべて必然であり、意味があります。